高架線の上で足を引き摺る音がする。
一人の男が歩いている。
何かを求めて、何処かへ行こうと。
銀色の髪は薄汚れて碌に光を反射しないが、男の目には光が宿っていた。
二十数年分の過去を、未来も捨てて、男は歩いている。
荷物はとうに捨て、まだ長く続くまっすぐな線路の上を男は歩いている。
男の後方には転々と赤い足跡が残っている。怪我しても尚、男は歩く。
その先に何があるかも知らずに、ただ歩いている。
男は歩き続ける。
名も知らぬ君の元へ